犬の飼育数の統計から考えるペット産業の今後

日本はペット大国として、さまざまな動物が暮らす国になりました。ここ数年では「ペットを家族の一員」と考える人も増え、飼育環境やフード、ケア用品などに対するこだわりがますます強くなっています。そんな中、犬と暮らす人々がどのような状況にあり、今後どんなトレンドが生まれるのかを知ることは、ペット用品市場に携わる方にとって極めて重要です。本記事では、まずは国内における犬の飼育頭数の推移を紐解きながら、そこから見えるペット産業の可能性について探っていきます。

犬の飼育頭数の推移をおさらいしよう

日本の犬は減っている?増えている?

まず取り上げたいのは、犬の飼育頭数が実際にどれほどあるのかという点です。一般社団法人ペットフード協会が毎年発表している「全国犬猫飼育実態調査」の最新(2022年)の推計によれば、犬の飼育頭数は約710万9千頭となっています(引用:
一般社団法人ペットフード協会「令和4年 全国犬猫飼育実態調査」 )。これは少子高齢化や都市部への人口集中などの影響で、ピーク時(2010年前後)の1,200万頭規模から徐々に縮小傾向にあるとされています。しかし、それでも依然として700万頭以上の犬が国内で暮らしているという事実は見逃せません。

さらに長期的にデータを見ていくと、「外飼い」から「室内飼い」への移行や、飼い主の高齢化に伴う飼育放棄の増減など、さまざまな社会背景が浮かび上がります。一方で、共働き家庭の増加やマンション居住者の増加によって、「小型犬」へのニーズが強まった時期もありました。こうした世の中の変化と犬の飼育頭数の動向には、密接な関係があるのです。

コロナ禍で浮き彫りになった需要

また、新型コロナウイルス感染症の拡大とともに、自宅で過ごす時間が増えたことから、「新たに犬を飼い始める人」が一時的に増えたという報道も見られました。ペットショップの売上増やブリーダーへの問い合わせ急増などがその一例です。ただし、コロナ禍をきっかけに飼われた犬が、飼い主の急なライフスタイル変化(在宅勤務の減少など)により手放されてしまうケースも懸念されています。

こうした波は一時的なものか、それとも中長期的に続く動向なのか。ペット産業に携わる方は、単年データだけではなく、可能な限り過去から現在にいたるまでの長期的推移を把握する必要があるでしょう。

「家庭どうぶつ白書2023-2024」1-1 犬の品種ランキング(全年齢)

ここで、ペット保険大手のアニコム損保が公表している「家庭どうぶつ白書2023-2024」に掲載されている、犬種別のランキング表(全年齢)を引用してみましょう。下記は表1-1の抜粋であり、実際の数字とは一部異なるサンプル値を含みます。
(※正確な数値は必ず原本をご確認ください)

順位犬種割合(%)推計頭数(約)
1トイ・プードル22.5173,642頭
2チワワ15.3117,865頭
3ミックス(小型犬)12.394,943頭
4柴犬7.860,145頭
5ミニチュア・ダックスフンド7.759,018頭
6ポメラニアン4.332,833頭
7ミニチュア・シュナウザー3.123,942頭
8ヨークシャー・テリア2.620,051頭
9フレンチ・ブルドック1.914,295頭
10マルチーズ1.813,968頭

※2023年アニコム損保「家庭どうぶつ白書2023-2024」より一部抜粋・参考。

このランキングだけを見ても、トイ・プードルがトップを占め、続くチワワミックス犬(小型犬)ダックスポメラニアンの小型犬で6割弱を占めていることが分かります。

トイプードルやチワワが根強い人気

上記の通り、トイプードルやチワワなどが常に人気上位にランクインしているのは、さまざまな統計調査でも裏付けられています。都市部のマンションでも飼いやすいサイズ感や愛らしいルックス、さらに飼育しやすい性質などが飼い主の高い支持を得ているからだと考えられます。

ミニチュア・ダックスフンドの人気と特徴

ミニチュア・ダックスフンドは長年、小型犬ブームの代表格とも呼ばれてきました。胴長短足という独特の体型や、明るく活発な性格が魅力で、初めて犬を飼う人にも人気があります。

ただし、胴長な体型ゆえに椎間板ヘルニアなどの腰・背中のトラブルを起こしやすい点にも注意が必要です。普段から段差を少なくしたり、床材を滑りにくいものに変えたりといった予防策を講じる飼い主が増えています。

犬の症例から見る、今後の開発ニーズ

~ 関節疾患・皮膚トラブルはどう対策する? ~

アニコム損保が公表する症例データ

続いて注目すべきは、「家庭どうぶつ白書2023-2024」の症例データです(引用:
アニコム損保「家庭どうぶつ白書2023-2024」 )。ペット保険加入している犬の診療記録をもとに統計をとっているため、

  • どの犬種でどのような病気・ケガが多いのか
  • 年齢別にどんな症状が出やすいのか
    といった情報を把握するうえで非常に有用です。保険加入者は医療に意識が高い層といえますが、それゆえに早期発見や予防ケアの傾向が可視化されやすいという利点があります。

特に多いのは関節系・皮膚系のトラブル

症例ベースでみると、膝蓋骨脱臼(パテラ)や椎間板ヘルニアなど、関節・骨格系の疾患が小型犬を中心に高い割合を示しています。これは、体重のわりに足が細い犬種や、骨格的に関節トラブルを起こしやすい犬種が存在するためです。また、柴犬などは皮膚疾患を訴えるケースも多く、アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎、外耳炎などの対策が欠かせません。

一方で、高齢犬になると心臓疾患や腎疾患も増えるなど、年齢による病気の種類も変化してきます。飼い主としては「症状が出てから治療する」のではなく、予防的にケアする動きが広まってきています。これは、犬が不調を訴えにくい動物だからこそ、飼い主が積極的に健康管理に努めようとする姿勢が増えていると考えられます。

今後のペット用品市場はどう変わる?

健康志向&プレミアム化の加速

ここまでのデータを総合すると、飼育頭数が減少傾向にあっても、1頭あたりにかける費用やケアの質は向上し続ける可能性が高いと言えます。少数の犬を大切に育てるため、プレミアムなフードや高品質なケア用品が注目されている状況は今後も続くでしょう。

また、予防やリハビリ目的の製品ニーズも拡大することが予測されます。たとえば、膝や腰などの関節を守るもの、皮膚トラブルを防止するものなど、単なる「おしゃれ用品」だけでなく、実用性と機能性を備えた商品への需要が見込まれます。犬と飼い主双方に優しい商品が求められるのです。

今後のペット用品市場はどう変わっていく?

ここまでのデータを総合すると、飼育頭数が減少傾向にあっても、1頭あたりにかける費用やケアの質は向上し続ける可能性が高いと言えます。少数の犬を大切に育てるため、プレミアムなフードや高品質なケア用品が注目されている状況は今後も続くでしょう。

また、予防やリハビリ目的の製品ニーズも拡大することが予測されます。たとえば、膝や腰などの関節を守るもの、皮膚トラブルを防止するものなど、単なる「おしゃれ用品」だけでなく、実用性と機能性を備えた商品への需要が見込まれます。

海外の視点:モルガン・スタンレーが示す2030年展望

さらに、世界全体の動向に目を向けると、モルガン・スタンレーが発表した「Pet Care Industry Outlook 2030」(引用:
https://www.morganstanley.com/ideas/pet-care-industry-outlook-2030)では、主に米国を中心としたペット市場が今後も大きく成長すると予測されています。具体的には、ペット関連支出は今後10年弱で倍増し、2030年には2,700億ドル(約30兆円)を超える規模に達する可能性が指摘されています。

この背景には、

  • ペットの家族化(Humanization)が進んでいること
  • 若い世代が積極的にペットを飼い始めていること
  • 高齢ペットの増加に伴う医療ニーズの拡大
    などが挙げられます。日本国内でも同様のトレンドが見られるため、プレミアム化・サービスの高度化といった世界的な潮流は今後ますます強まるでしょう。すなわち、国内市場が減少局面にあるとはいえ、「1頭あたりの支出をより充実させる」動きが定着し、新たなビジネスチャンスを生み出すポテンシャルが十分にあると考えられます。

オーダーメイド化・サイズ展開の必要性

トイプードルやチワワといった人気犬種だけでなく、ミックス犬の増加によって、多種多様な体型が存在するようになりました。オーバーサイズやアンダーサイズが発生しやすいだけでなく、被毛の違いで素材の快適性に差が出ることもあります。そこで、ペット用品の開発ではフィッティングやサイズ展開を細やかに行うこと、素材の通気性や伸縮性を検証することが一層重要となってくるでしょう。

製品開発への意気込み

~ アニコムの症例や飼育統計を活かした一歩先の挑戦 ~

ここまで見てきたように、

  • ペットフード協会:国内における犬の総飼育頭数の推移(約710万頭)
  • ジャパンケネルクラブ(JKC):純血種を中心とした登録数、犬種人気の動向
  • アニコム損保:保険加入犬の症例データ、疾患トレンド
    といった複数のソースを組み合わせることで、市場全体のボリュームから人気犬種、さらに具体的な病気・ケガの動向まで、立体的に理解することができます。

これらの情報を「一つでも多くの犬と飼い主が笑顔で暮らせる商品につなげる」のが、ペット用品開発者にとっての使命でしょう。飼い主が「こんな商品があったら良かったのに」「これは本当に助かる」と思う瞬間を生み出すためには、データと実際の声の両方を取り入れながら、機能性と快適性を追求する必要があります。

「健康課題を解決する商品」を届けたい

多くの飼い主が悩みを抱える関節トラブル皮膚トラブルなどに対応する製品は、まだ十分に行き渡っていない面もあります。たとえば、膝蓋骨脱臼を起こしやすい小型犬用のアシストグッズや、被毛を傷めにくい素材を使った保護ウエアなど、専門家の知見を取り入れながら開発する余地は大きいはずです。

また、犬種・年齢・生活環境など、個々の状況に合わせた選択ができるよう、サイズ展開やカスタマイズ対応を充実させることで、多くの飼い主に「これならうちの子に合いそう」と思ってもらえるのではないでしょうか。ペット自身にも負担をかけず、飼い主も取り扱いやすいという観点から、安全性と快適性の両立を図ることが重要と思います。

データと飼い主の目線は重要です

アニコム損保の症例データからは、疾患が起こりやすい年齢帯や犬種が把握でき、どの分野でのサポートが最も求められているかが見えてきます。一方で、飼い主は数値だけで判断するのではなく、「愛犬と長く暮らすため」「痛みを緩和してあげたい」といった情緒的な動機で商品を選ぶことも多いものです。

したがって、ペット用品を作っていくにあたって「データからニーズを数値化したものを取り入れつつ、実際の声をしっかり拾い上げる」という二つの視点が必要となります。

専門知識を取り入れたり、モニタリング調査を行ったりすることで、データと感情を結びつけた商品づくりができるのではないでしょうか。

これから私たちが目指していきたいもの

国内では約710万頭の犬と約890万頭の猫(いずれもペットフード協会2022年推計)が暮らしており、その多くが室内で生活をともにしています。こうした環境下で、サポーターや歩行補助製品といったペット用品は、愛犬・愛猫が安全かつ快適に暮らすための大きな支えとなります。特に、高齢化するペットや関節に不安のある犬をケアする際には、段差対策や床材への配慮と同じくらい、身体を直接保護・サポートするグッズの存在が欠かせません。

今後は、飼育数の推移や人気犬種の特徴、そしてアニコム損保の症例データなどを通じて、「どの犬種がどのような課題を抱えやすいのか」をより具体的に分析し、それに合ったサポーターや歩行補助製品を開発していくことが求められます。さらにグローバル市場拡大の可能性を踏まえると、日本発の高品質なペット用品を世界に届けるチャンスも大いに広がっていくでしょう。

当サイトでは、ペットと飼い主が少しでも長く、より楽しい暮らしを送るために商品開発を目指しています。最終的には「使いやすく、愛犬・愛猫の身体をしっかりサポートするグッズ」が存在することで、はじめて安心と快適が実現できると信じています。

「あって助かった」「もっと早く欲しかった」と言ってもらえるようなペット用品、サポーターや歩行補助製品などを今後も生み出し続けて、ペットと飼い主の笑顔を増やしていきたい――これこそが私たちの願いであり、ゴールでもあります。数多くの愛犬や愛猫たちが、健康で幸せに暮らせる未来のために、私たちはこれからも新たなアイデアや技術を積極的に取り入れ、製品開発に取り組んでいきます!

こういった製品が欲しいと考えている方がいらっしゃれば是非お問い合わせください。

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